君は私の唯一の光
「ふわぁ〜、ここどこだ?」



明らかに自分ではない、男子特有の低い声で呑気(のんき)な言葉が放たれた。


声がした方に目を向ければ、大きく伸びをしている男の子……神山くんがいた。


神山くんと目があった。



「あれ、ここって病室?で…あんた、誰?」



“あんた”なんて呼ばれる筋合いないんだけど!とか思いながらも、声にはせず、たんたんと現状を説明した。ナースコールを押しながら。



「ここは、おっしゃったとおり病室です。あなたは、骨折の手当て中に眠ってしまわれたため、ここに運ばれたとお聞きしました。」


「あー、そうだ。包帯巻かれてるうちに、寝ちゃってたんだよな、俺。てか、な……」



ガラガラ————



「お、洸夜くん起きたね。調子どう?」



「あ、元気です。足は違和感あるけど。」



「そっか。まあ、しばらくは我慢してね。1ヶ月後には、退院予定だから。」



「は〜い。」



はあ。あのお母さんに比べ、随分(ずいぶん)騒がしい。こんな人、私と一緒じゃ無理でしょ。まあ、ご老人の方々も相手は難しいだろうけど。でも、由奈さんとは気が合ってるみたい。2人は、テンポよく話してるし。



「乃々ちゃん、ありがとね。教えてくれて。」



「いえ、大丈夫です。」




それから、由奈さんは私と神山くんの点滴の確認をして、出ていった。



いつもなら静寂(せいじゃく)が訪れるが、今日は……というか、これから1ヶ月は、無理そうだ。




「なあ、名前って、ノノって言うの?」



ほらね。すぐ、話し出した。



「正確には乃々花です。桑野乃々花と言います。」



「へぇ。あ、さっきの看護師さんとかから聞いたと思うけど、俺は、神山洸夜でーす。1ヶ月、よろしく。」



「こちらこそ。」



会話が途切れた。心の中で小さくガッツポーズをして、読書に戻ろうとしたが…



「ねぇ、何歳なの?今。」



「……15歳です。11月で、16になります。」



「へぇ。じゃあ、一個下か。」







「学校、どこ行ってんの?」



「行ってません。」



「あ、入院長いんだっけ。」



「はい。」







「なんで、ここで入院してんの?」


「病気です。」


「そっか。大変だな。」







「ねえ、なんか喋ってくれねーの?」



「特に私から話す事は無いので。」



「えー。」







「あのさ〜……」



「もう、静かにしてもらえませんか!?」



堪らなくなって、言ってしまった。今までまともに人と関わってこなかったせいで、感情の制御(せいぎょ)ができない。どうすればいいかわからない。



興奮して大声を上げたからか、呼吸が荒くなって、目の前が(かす)んでいく。そのまま私は、ベットから落ちた。



「おいっ!大丈夫か!?」



切羽(せっぱ)()まった神山くんの声が、遠くから聞こえたのが、最後。そのまま私は、意識を手放した。


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