君は私の唯一の光
朝が来た。
学校がある生活に慣れているせいで、6時頃に目が覚めた。
乃々花が倒れて、12時間。
いまだに目を開けない乃々花に代わって、機械音だけが鳴っていた。
・
・
・
朝食が運ばれてきた。
それでもまだ、乃々花は起きなかった。
食べていたら、病室の扉が開いた。入ってきたのは、高身長の若い男。俺の知り合い……ではない。
黒髪に白い肌に整った顔立ち。白雪姫の男版って感じ。
目が合って、会釈された。俺も慌てて返したけど、顔を上げた時には、もう俺の方なんか見ていなくて、乃々花のベットサイドの椅子に座るところだった。
慣れている様子の男は、動かない乃々花の手を握った。その様はまるで、恋人…だった。
映画とかで見るような光景。朝日が差し込む病室で、眠る彼女と優しく手を握る彼氏。いつの日か、姉と妹に見させられたワンシーンを連想させた。
なんか、見るのが辛くなって、無言で朝食を食べ終え、スマホに入った友達からのメールに返信をした。ほとんどが昨日来てたものだったけど、結局あれから何もする気力が湧かず、俺にしては珍しくボーっとしていたから、返信しなきゃいけないものが、山のようにたまっていた。
ほとんどが同じような内容で、思わず笑ってしまった。スマホから視線を上げると、乃々花が目に入った。それと同時に、こんなにたくさん連絡してくれる人がいるのは、普通じゃないっていうのを、思い出した。俺より重大な問題を抱えている乃々花にこそ、こういう何気ないメールが必要なはずなのに。
俺が、どれだけ恵まれた環境の中にいるのか、よくわかった。こんなに大切な事を教えてくれた乃々花には、感謝しかない。
『今日、学校終わったら、部活のメンツでお見舞い行くわ。』
俺が所属するサッカー部のマネージャーの松原からの着信だった。こんな状態の乃々花がいる病室に、あんなうるさい奴らを招いても、いい事は無い。急に目を覚ましても、俺がすぐに対応できるとも限らない。だからといって、好意で見舞いに来てくれるって言ってる奴らに断るのも、申し訳ない。
「乃々?……乃々!?」
悶々と悩んでいると、さっきの男の歓喜に溢れる声が聞こえた。
「斎藤さん、乃々が、目を覚ましました。来てください!」
乃々花……目覚めたんだ。喜ぶと同時に、少し苦しい想いに駆られた。男が、“乃々”って親しげに呼んだのが、ちょっとだけ、気に食わなかった。
学校がある生活に慣れているせいで、6時頃に目が覚めた。
乃々花が倒れて、12時間。
いまだに目を開けない乃々花に代わって、機械音だけが鳴っていた。
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朝食が運ばれてきた。
それでもまだ、乃々花は起きなかった。
食べていたら、病室の扉が開いた。入ってきたのは、高身長の若い男。俺の知り合い……ではない。
黒髪に白い肌に整った顔立ち。白雪姫の男版って感じ。
目が合って、会釈された。俺も慌てて返したけど、顔を上げた時には、もう俺の方なんか見ていなくて、乃々花のベットサイドの椅子に座るところだった。
慣れている様子の男は、動かない乃々花の手を握った。その様はまるで、恋人…だった。
映画とかで見るような光景。朝日が差し込む病室で、眠る彼女と優しく手を握る彼氏。いつの日か、姉と妹に見させられたワンシーンを連想させた。
なんか、見るのが辛くなって、無言で朝食を食べ終え、スマホに入った友達からのメールに返信をした。ほとんどが昨日来てたものだったけど、結局あれから何もする気力が湧かず、俺にしては珍しくボーっとしていたから、返信しなきゃいけないものが、山のようにたまっていた。
ほとんどが同じような内容で、思わず笑ってしまった。スマホから視線を上げると、乃々花が目に入った。それと同時に、こんなにたくさん連絡してくれる人がいるのは、普通じゃないっていうのを、思い出した。俺より重大な問題を抱えている乃々花にこそ、こういう何気ないメールが必要なはずなのに。
俺が、どれだけ恵まれた環境の中にいるのか、よくわかった。こんなに大切な事を教えてくれた乃々花には、感謝しかない。
『今日、学校終わったら、部活のメンツでお見舞い行くわ。』
俺が所属するサッカー部のマネージャーの松原からの着信だった。こんな状態の乃々花がいる病室に、あんなうるさい奴らを招いても、いい事は無い。急に目を覚ましても、俺がすぐに対応できるとも限らない。だからといって、好意で見舞いに来てくれるって言ってる奴らに断るのも、申し訳ない。
「乃々?……乃々!?」
悶々と悩んでいると、さっきの男の歓喜に溢れる声が聞こえた。
「斎藤さん、乃々が、目を覚ましました。来てください!」
乃々花……目覚めたんだ。喜ぶと同時に、少し苦しい想いに駆られた。男が、“乃々”って親しげに呼んだのが、ちょっとだけ、気に食わなかった。