その手をつかんで
プロポーズ
蓮斗さんと向き合って話をする日まで、一週間。この一週間を我慢して乗り越えれば、彼のことで煩わしく思うこともなくなる。

そう思い、我慢週間と心の中でネーミングした。

しかし、蓮斗さんは蓮斗さんである決意を固め、この一週間に臨んでいたらしい。

あとから知ったのだが……。


「野崎さーん、専務がお呼びですよー」


毎日この声掛けで、私はいそいそと表に出ていく。

広くて、明るい食堂で食事をしている人はまばら。本日の蓮斗さんは遅めの昼食だった。


「お疲れ様です」

「うん、お疲れ様。今日はどうだった?」


このやり取りは、毎日ほぼ同じ。


「今日も昨日と同じくらい来てくれていると思います」

「そう、良かった」

「はい」


このあたりの会話もほぼ変わらない。


「仕事で困っていること、ない?」

「ないですけど」

「けど、なに?」

「専務に毎日来られるのは、ちょっと困っています」
< 101 / 180 >

この作品をシェア

pagetop