その手をつかんで
本音を言ってしまった……。

蓮斗さんは苦笑する。


「困るのか。俺は毎日元気かなと顔を見たいんだけどな。ここに来ないと見れないからね」


確かに蓮斗さんがここに来なければ、会うことはない。

でも、彼は私の顔を見るために来る。


「それに、ここのメニューは栄養バランスが良くて、美味しいから、毎日食べたい」


毎日食べたくなるメニューを考えたのは私だ。毎日食べたいと言われるのは、嬉しくなるほめ言葉。

そんな嬉しいことを言ってくれる人に、来ないでとは言えない。

蓮斗さんの感想は、私にやる気を与えてくれる。でも、嬉しいけど、困る……。どうしたらいいのだろう。

戸惑って返す言葉を探す。彼は私をじっと見つめていた。

目を逸らして、ドアの方を見る。すると、そこには……。


「蓮斗さん、見つけた!」

「は?」


軽やかな足取りで私たちのところに来たのは、ゆかりさんだ。蓮斗さんは自分の腕に手を置くゆかりさんを訝しげに見た。

ゆかりさんは気にすることなく、空いている椅子に座る。


「ちょっとお話があるの」
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