フラれ女子と秘密の王子さまの恋愛契約
「……そうだったの」
翌日お見舞いに来た香澄に、ガマンできなくて全てを打ち明けてしまった。
レイが王子だったこと。婚約は偽りだったこと。だけど……本当に好きになってしまったことも。
「あの年齢でずいぶん落ち着いてると思ったけど、やっぱり王子様として苦労してきた方なんだね」
「……でも、私には王子様とか関係ない。レイがレイだから、好きになったんだ」
私の言葉に、香澄は「そうだね」と同意してくれた。
「ステータスとかの条件で相手を選ぶのも、わたしは否定しない。人間が生き物である以上、優秀な子孫を残すための本能的な戦略だものね。でも……」
香澄は窓の外に目を向け、空を見上げながら言う。
「わたしは、さくらの方が本当の恋愛してると思う。条件に関係なく、ただ純粋に人を想う……素敵なことだよ。それがどんなに苦しくても、ね」
わたしは失敗したから、と香澄は寂しそうに笑った。
「あいつ、仕事では優秀なのに……なんで、私生活ではああまで優柔不断で人間関係にルーズだったんだろ。
女性と見れば、営業で培ったトークで口説くしさ。
父親になればしっかりすると思ったけど、甘かった。わたしも見る目無かったわ……」
あいつ、が誰かを指すかくらいわかる。
香澄は「わたしはやっぱ恋愛に向いてないわ。もう男はこりごり!これからは子どもと二人で生きるわ」と、らしいことを言うから。少し可笑しくなった。