フラれ女子と秘密の王子さまの恋愛契約
「さくら、良かったらまたルームシェアしない?地元に戻っても、私はお父様のお世話にはならないつもりだから」
香澄の提案は魅力的だったけど、ある意図が見え隠れしてますわよ。
「いざという時、私に預ける気でしょ?」
「むむ、バレたか」
「わかりやすいくらい、バレバレだって」
お互い、顔を見合わせた瞬間に吹き出した。
「ルームシェアか……いいかもね」
香澄の赤ちゃんは楽しみだ。どれだけ美形に生まれるか。
レイに話したように、赤ちゃんや子どもは好きだし、お世話は苦にならない。
(……うん、私にとって育児を体験できる、最初で最後のチャンスだろうから)
きっと、私は子どもを持てないだろう。
私をもらってくれる奇特な人がいるとは思えないし……。
叔母さんに頼んだお見合いだって、相手にも断る権利がある。
明日26になる私には、現実というものが嫌になるほど理解出来てる。結局、何もかも分相応という言葉が一番なんだ。
両親の様に熱烈な恋愛をして、ともに歩みたかった人はいたけど。
でも、いい……。
私は、一生彼に片想いし続けよう。
彼に貰った、不思議なデザインのエンゲージリングを指にはめて眺める。
これだけは、手元に置くことを許して欲しい。