エリート脳外科医の溢れる愛妻渇望~独占欲全開で娶られました~
どちらが本当?



 *

 お昼過ぎの館内はお客さんもまばらでのんびりとゆったりとした時間が流れている。一日の中で私が最も好きな時間帯だ。

 ここ港町図書館は、市街地にある本館から少し離れた場所に位置する分館で、比較的こぢんまりとした造りになっている。勤務する司書の数もそれほど多くなく、利用者の多くも近隣住民というアットホームな雰囲気の図書館だ。


「三冊ですね。二週間後の土曜日の返却となります」
 

 ありがとうございましたと笑顔で挨拶をすると、目の前のお客さんの表情も明るくなる。


「お借りしますね」


 港町図書館の常連さんで、今年七十一歳になる中澤春子(なかざわはるこ)さんは、カウンターに薄紫色の風呂敷を広げると借りた本を丁寧に包んだ。そしてそれを片手で持とうとしたとき、ふらりと身体がよろめく。


「春子さん大丈夫? 重たくない?」


 そう声を掛けると、春子さんは笑顔で首を横に振る。


「大丈夫だよ。このくらいならいつもしっかりと持って、歩いて家まで帰るからね」


 娘さんの家族と同居しているという春子さんの自宅は港町図書館から歩いて十分ほどの場所にある。

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