別れたはずの御曹司は、ママとベビーを一途に愛して離さない
「みーくん、ばぁばとアイス食べない?」

ギブアップ気味の母がそう言って湊斗の顔を覗く。

「うん! アイスたべたい! いちご味がいい」

「じゃあ売店に行こうか?」

少し休憩をとることにして、三人で手を繋ぎながら売店へと向かい出したそのとき。

「凛子さん?」

ふいに名前を呼ばれてそちらを振り向いた。

え?

そこには見覚えのある顔があって大きく目を見開き、思わず足が止まる。

「莉奈さん……お久しぶりです」

声をかけてきたのは、渚さんの妹の莉奈さんだった。莉奈さんの周りには友だちと見られる人が数人いて、その輪を抜け出してこちらへと足を進めてきた。

渚さんと別れてから莉奈さんとも疎遠になり会うこともなかった。それなのにこのタイミングで遭うなんて。動揺から鼓動が速くなっていく。

「お久しぶりですね」

あれから三年。あの頃よりも大人っぽくなった莉奈さんが柔らかく微笑む。

「この人だぁれ?」

湊斗が目の前に立つ莉奈さんを不思議そうに見つめる。

「……ママのお友達よ」

まさか本当のことは言えない。とっさにそんな言葉を吐いた。
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