蕾の恋〜その花の蜜に溺れる〜
約束に溺れる
・・・・・・
・・・




後夜祭ってワクワクするような響きは聞いただけで終わった学園祭


理樹さんが現れることが分かっていたから

一ノ組の護衛が学園に配置されていたらしく

何も起こらない平和な学園祭だった・・・らしい?


お昼過ぎには解散して其々、家に帰ったから

後のことはわからないってことなんだけど


「蓮」


「ん?」


「紅茶、冷めるよ」


「は〜い」


大ちゃんの部屋に戻ってからずっと
窓に張り付いて蓮の花の方を見ていた私

既に太陽が高い所にあるから
咲いていたとしても閉じているころなんだけど

もしかしたらって希望を捨てられなくて眺めてみても

やっぱり咲いてはいなかった


大ちゃんの隣に座ると
カップを持った大ちゃんがちょうど紅茶を飲むところで

その喉仏の動きに目が釘付けになる


「ん?」


その視線に気付いた大ちゃんに
・・・本当のことなんて言えない


「ううん、なんでもないよ
紅茶ありがとう」


それだけ言うとカップを持ち上げた


琥珀色の紅茶に口をつけると
広がる香りに頬が緩む


「蓮は紅茶好きだよね」


「うん」


「で?さっきは何を見てたの?」


「・・・っ」


油断していた

大ちゃんに隠し通せるわけもないのに
誤魔化せたと思った自分に頭の中でため息を吐く


「で?」


「・・・あの、ね?」


「うん」


「大ちゃんの、喉仏、見てたの」


「ん?」


「だって、なんか・・・カッコいい」


言いながらどんどん尻窄みになる声

俯き加減でそっと大ちゃんの顔を窺えば


手で口元を隠した大ちゃんが見えた


「・・・?」


どうしたんだろうと顔を上げると


「蓮は俺をどうしたいの?」


腕の中に閉じ込められた


大ちゃんの胸につけた耳から聞こえる鼓動の速さと

閉じ込められる寸前に見えた耳が赤かったから


照れていたんだと思う


でも・・・


それも嬉しくて大ちゃんの背中に腕を回した


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