蕾の恋〜その花の蜜に溺れる〜
ヤキモチ


女子五人でシャワーを浴びて
涼しいリビングルームのソファに集合した


キッチンでバーベキューの準備を進めているヒロさん達の邪魔をしないように座っていたけれど


「眩しい」


涼しいはずの此処も大きな窓の所為で夏特有の刺すような陽射しに暑さを感じる様


「ねぇ、海水浴場の辺りまで歩いて行けば海の家でかき氷とか食べられるんじゃない?」


「あ〜、それ私も思ったぁ」


優羽ちゃんの発案に琴ちゃんが乗っかって

コロコロとよく笑う二人を見ているだけで


「賛成」なんて口走っていた


「でも、勝手に出たら叱られる」


瑛美ちゃんは複雑な顔をしていたのに


「大吾〜、ちょっと良い?」


まるちぃはカウンターの中にいるエプロン姿の大吾さんを呼んだ


「ん?」


「暑いからかき氷食べたいの」


ソファのすぐ脇に立つ大吾さんを見上げるまるちぃは甘えた声を出した


「じゃあ俺が」


エプロンに手を掛けようとした手を止めて


「買いに行きたいのっ」


永遠に向けるような甘えた声に
此処に永遠が居なくて良かったと背筋に寒気が走る


「若に叱られるだろーが」


そんなまるちぃに臆することなく
普段とは違う砕けた話し方の大吾さん


まるちぃ以外の視線は間違いなく
この二人の関係性を疑うもので


それに気づいた大吾さんは


「ほら、ちぃがそんなだから
なんだか疑われてますよ」


四人の視線を端から追った


「へ?・・・ん?疑う?
なんで?」


まるちぃは意外なことのように鳩豆顔になって

ハァと肩を落とした大吾さんは


「元々自分は森谷で千色お嬢付きだったんです
それを木村の若が『側に』と言ってくださって」


種明かしをしてくれた


「二人の時に砕けた話し方になるのも
若はご存知なので・・・大丈夫です」


後頭部に手を当てて少し肩を竦めた大吾さんの様子に

なんだかホッとした








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