ドキドキするだけの恋なんて
8

「上原さん 車?」

朝 マンションの前まで 迎えに来てくれた 上原さん。


「昨日 実家に帰って 乗って来たんだ。」

「何も 言ってくれないから。電車で行くと 思っていたのよ?」

「あず美ちゃんが 言ったんでしょう? ミステリーツアーって。」


いつもと違う カジュアルな服装の 上原さんは

笑顔も 若々しくて 新鮮で。


私は じっと 上原さんを 見つめてしまう。


「んっ? どうしたの?」

「ううん。何か 今日の上原さん いつもと違うから。」


照れて 俯く私に 上原さんは 困ったような 笑顔になって。


「ねぇ あず美ちゃん。そろそろ 俺のこと 下の名前で 呼んでくれない?」

「えっ!下の名前って… 翔真さん…?」


「ショーマでいいよ?」

「駄目。恥ずかしい。翔真さんこそ。私のこと 呼び捨てでいいよ。」


「あず美…?うん。照れるな。」


車の中で 話しながら。

運転する 翔真の横顔は いつもより 男っぽくて。


何か 今日は 最初から ペースを乱されている…


大人になってからの 恋愛って こういうこと?


じわじわと ゆっくり 沁みてくる。






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