雨の巫女は龍王の初恋に舞う
第六章 後宮の妃
 靴音も荒く歩いていく龍宗のあとを、飛燕は早足でついて行く。


「お待ちください、陛下」

「くだらん時間をつぶした。今度議案を持ってくるときは、しっかりと礼部で吟味して今回よりもましな内容にしろと周尚書に伝えておけ」

 相談したい議案があるとわざわざ出向いてみれば、まるで中味のない案件だった。龍宗の質問にろくに答えることもできずにあたふたする礼部尚書をおいて、龍宗は早々に用意された部屋を退出したところだ。


 飛燕も、首をひねる。

「おかしいですね。確かに新しい教育機関のことについては次の議案書に入れる予定でしたので、その精査だと思ったのですが……」

「あれでは、議論に値するとも思えない。一体周尚書は何を考えて」

「まあ、龍宗皇帝陛下」

 ふいに声をかけられて、龍宗は振り向いた。
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