かりそめの関係でしたが、独占欲強めな彼の愛妻に指名されました



桐島さんが選んだお店は、駅近くにある和食専門店。
通勤の際に使う駅ではあるものの、ここはいつも使う西口改札とは反対の東口を抜けた先にあるお店のため、あまり馴染みがない。

オフィス街は西口側だし、改札口を抜けた街並みが賑やかなのも西口。東口側にもそれなりに店舗は並んではいるものの、どうもいまいち盛り上がりにかけるイメージが否めない。

会社で催される飲み会が西口側にあるお店、もしくは別の駅付近のお店を使っているせいもあってか、行員が個人的に使うのも自然とそうなっている。

そのため、東口にあるお店は行員と出くわすこともなく穴場なのだと桐島さんが教えてくれた。

「雰囲気よくてうまい店も多いよ」と桐島さんが言う通り、今日連れて来てもらったお店の料理もどれもおいしそうで、メニュー表を前に目移りして少し迷ったほどだ。

案内された半個室の壁には生成り色の漆喰が塗ってあり、木製の傘のペンダントライトが天井からつり下がっている。

掘りごたつにテーブルというスタイルなので、足元が楽で息がつけた。
桐島さんがビールを頼むというので、一杯だけ付き合うことにして、季節限定の桃のカクテルを頼む。


< 61 / 243 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop