無口な彼の熾烈な想い

フクロウパラダイス

「可愛い・・・。ねえ、ねえ、絢斗さん、このメンフクロウの目とくちばし、絶妙な配置で堪らなくないですか?」

英名Western Barn Owl。

ハート型のお面をつけているように見えることから、日本では面梟とよばれる。

声は金切り声で高音、ヨーロッパの大部分とサハラ以外のアフリカに多く生息する。

絢斗は梟の顔と説明書きを交互に見たあと、横でうっとりとメンフクロウを見つめる鈴を凝視した。

絢斗にとっては、右手で絢斗の腕を掴み左手で興奮ぎみにパシパシと絢斗の肩を叩く鈴の方が可愛い。

「ん・・・?えっ?いやー!待って、ちょっと待ってほしい・・・」

両手を絢斗から離し、何かを見つけたらしい鈴はちょこちょこと急いで駆けだしていった。

「いや無理、これは惚れてまう、惚れてまうやろ」

そう言って鈴が近づいた木の上には、

この動物園の有名人(梟)

゛シロフクロウ゛のシロちゃんがとまっていた。

真っ白な毛並みは確かに美しい。

しかし、マスカラを塗ったような黒淵の目。

黄色い結膜に浮かぶ真っ黒で真ん丸な瞳孔は、絢斗にはどう贔屓目に見ても間抜けな顔にしか見えない。

こういうのを゛ブサカワ゛というのだろうか?

と、絢斗がマジマジとシロチャンを見ていると、突然、シロチャンは目を閉じ正面を向いた。

その顔が意外すぎて、絢斗の脳は一瞬にして機能を停止した。

ただでさえ間抜けなシロフクロウの顔は、更に三本の線で描けるほど単純な顔つきになってしまったのである。

想像できない人は是非ともシロフクロウ寝顔(画像)で検索してほしい。

絢斗のこのときの気持ちに深く同調できるはずだ。

「絢斗さん?どうかしました?お腹痛い?」

突然うつむき、お腹を抱えるようにして前屈みになって震え始めた絢斗に、鈴は驚いてその顔を覗き込もうとした。

「絢斗さん、きついならどこか座れるところへ・・・」

「いや、そうじゃない」

「でも・・・」

「いや、そいつの顔が悪いんだ」

顔を上げた絢斗の顔には満面の笑顔とこらえきれずに浮かんだ涙が瞳を覆っていた。

「ごめん、こいつを可愛い・・・っていう鈴の感性も面白くて。バカにしている訳ではないんだ」

肩を震わせて笑う絢斗は、ゲームの推しの、限定有料激レアスチルのように、いや目の前のシロちゃんと同じくらい?尊くて美しかった。
< 53 / 134 >

この作品をシェア

pagetop