獣人皇帝は男装令嬢を溺愛する ただの従者のはずですが!
第二章


***

 ハミル殿下とお茶会で盛り上がり、マクシミリアン様がターバンの下に覆い隠してきた秘密を知った日の翌朝。
 私は皇宮裏の廃棄食材置き場にいた。
「ふみゃー!」
 私を目にするや、たむろしていた野良猫たちが一斉に擦り寄って来る。
「お待たせ、猫ちゃんたち。おぉおぉ、今日も元気そうだなぁ」
 この二十日間、私は二、三日に一度のペースで皇宮周辺の野良猫たちを手入れするのを習慣にしていた。
 前世の記憶を持つ私からすると信じられないのだが、前述した通りヴィットティール帝国民には猫の飼育はおろか、愛でる習慣もない。飼い猫の概念がないのだから、猫の方も人を敵認定している。
 なんとも残念な現状だが、私の見解はこうだ。でっかいだけで虎だってネコ科動物、大きく括れば猫の仲間だ。獣人である自分たちが半分猫のようなものなのだから、飼うという発想には至らないのだろうと、この世界で十五年を経て結論付けていた。
「今日は特別に、君たちへのおすそ分けもあるんだ」
 厨房付きの女官からもらった包みを解き、中のご馳走を猫たちに披露する。
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