ささやきはピーカンにこだまして
第3章『for 結城先輩』

八木(やぎ)せんぱーい、わたしたちどこに座ったら……」
「どこでもいいけど。…ここ、来る?」
「はーい」
 今日は1年生の4回目の練習日。
 練習日が週2回しかないっていうことは、うちとけるのにも時間がかかるってことで。
 彼女たちには、勧誘係だったわたしが、やっぱり一番身近だから。
 ちゃんとお世話してあげなくちゃ、って思うし。
 6人の女子がちんまりかたまって、わたしのうしろでフロアに座っているのを見たりすると、なんだか鼻のうしろがツーンとしちゃう。
 あったねぇ……。
 わたしにも、そんな時代がさぁ。
 ドキドキしたねぇ……。
 結城(ゆうき)先輩のカッコよさには。

「よ。先輩」
 となりに座った桃子が、わたしの耳にささやきながらわき腹にエルボー。
 うるさい。
 あんまり実感ないけど。
 わたしたちは、センパイになったんだよ。
 お手本にならなくちゃ。
 キリッとね。
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