彼は、自分からは指一本触れなかった。

遊女の一晩を安くもない金で買い
こちらが見惚れるほどの微笑をたたえて

ただ、誘うような色香をまとい
そっとささやくだけなのだ。


「君はここから抜け出せない。俺も主人からは逃げられない。似たもの同士、ふたりきりでいる何気ない時間が、どうしようもなく尊く思える」

「君の前にいる間だけ、俺は俺でいられる」


限られた時間の逢瀬しか許されないあなたに
お願いがあるの。

私はあなたのことをなにも知らないけれど

一度でいい

あの商人に身請けをされる前に
私を奪って。


公開*2020.1.4

〜アナザーベリーズのテーマに合わせて
執筆いたします。
メリーバッドエンド、切ない恋愛小説です〜


2021.4.9
【アナザーベリーズ恋愛小説大賞・入賞】
誠にありがとうございます。
王道ではなく、目のとまりにくいこの作品に
出会ってくださった読者さまに
感謝申し上げます。

この作品のキーワード
遊郭  メリバ  秘密  切ない  純愛  真実  衝撃  ミステリー