皇帝陛下、今宵あなたを殺害いたします―復讐するのに溺愛しないでください―【コミカライズ原作】
お墓参りを終えた私は、遠回りをして部屋へと向かうことにした。
天気は快晴。心地よい風が頬を撫でる。
せっかく外に出たというのに、すんなり部屋に戻るのはすこしだけ勿体ないような気がしたから。
城の裏手のルートを周り人気のない道をのんびり歩く。ローブなんていらないほど、ポカポカ気持ちいい。
でも、なんであそこに、お父さまが眠ってるのかしら?
騎士たちと共に、墓石に刻まれていたお父さまの名前が頭を離れない。
あのような場所で供養してもらえるのは、もちろん嬉しい。嬉しいのだけれど⋯⋯ルイナードの考えが、全くよめない。
自分が手をかけた相手を神聖な場所に埋葬するだろうか?
『アイリスも本当はわかってるんじゃないのか?』
瞬時にぷるぷると頭を横に振る。
いいえ。私は、わからない。変なことを言うのは、やめてほしい。
考えを打ち切りながら、ジメジメした城の裏手ルートを突き進んでいた、そのとき。
道中に懐かしいものを見つけてしまい、私は思わず足を止める。
「抜け穴⋯⋯」
グランティエ城は、全方位高い鉄格子とブロック塀に囲まれている。
しかし、昔からこのブロック塀の一部分だけが、誰がが食べてしまったかのような、小さな穴がポッカリと空いているのだ。
穴の向こう側は林となっていて、たまに動物たちが舞い込んだりもする。
幼い頃、私とルイナードはココを“抜け穴”と名付け、たまにお忍びで城下町に遊びに行っていた。
あの頃に比べて大きくなった私の身体は、ここを通り抜けることは出来ないだろう。