離縁するはずが、エリート外科医の溺愛に捕まりました
離婚前提夫婦の初夜


 窓の外を見上げると、空は澄み切った青空。

 あまりに晴れ晴れとしていて、逆にそれが恨めしく思えてくる。

 テーブルに両肘をついてガラス越しに空を見上げていると、正面から「おいおい」と苦笑い混じりの声が聞こえた。


「なんて顔してんだよ、こえーよ」

「だって……」


 目が合うとくっと肩を揺らして笑うのは、幼なじみのあっ君こと、町田(まちだ)篤史(あつし)

 私──川崎(かわさき)みのりの二歳年上の二十八歳で、もう二十年来の付き合いがある。

 大学卒業後に大手衣料品メーカーに就職したあっ君は、今はもう実家を出て都内で独り暮らし。

 海外出張も多いらしく、久しぶりにこうして会ってお茶をしている。

 実の兄のように付き合ってきたあっ君は、気心知れたなんでも話せる家族のような存在。

 困った時はすぐに「あっ君~!」と頼っていた。

 明るく社交的で友達も多いあっ君は、ずっと私の憧れ的存在でもある。

 小学生高学年から高校生の間は球児でずっと坊主頭だったけれど、今は対人受けするアップバングショートの爽やか系だ。

 こうしてスーツをビシッと着ているのを見ると、子どもの頃がやけに懐かしく思えてくる。

 大手企業に勤めているし、きっとモテるんだろうなと密かに思っている。

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