狂おしいほどに君を愛している

54.爆発

「リーズナに憑依しているんですか」
「ああ」
エリザベート・バートリが召喚した何かがリーズナに憑依していることがエドウィン殿下の調査で分かった。
リーズナの最近の評価が下落していた。
猫かぶりの上手い彼女が人前で本性を晒すなんて考えにくかった。
「すでに色々やらかしている。人前で民に手を出したり。おかげでリーズナ嬢の評価は最悪だ」
「本性が晒されただけでしょう」とノエルはリーズナの状況に興味なさそうに言う。
「貴族令嬢の模範と言われている人だぞ」
眉間に皴を寄せてノエルに口を慎むように促すエドウィン殿下をノエルは鼻で笑った。
「確かにあの底意地の悪さは貴族らしいな」
ノエルの言葉を理解できるのは彼女の本性を知っている私だけだろう。
「殿下、リーズナは助かるんですか?」
「助けるのか?」と視線でノエルが言ってきたが無視をした。
別にどうなろうが知ったことではないが、殺してやりたいと何度も思った相手だけど実際に彼女に悲惨な末路が待っているかもしれないとなるとあまりいい気はしない。
「難しいだろうな。現在、憑依をとく方法はないし彼女の状態も不明だ。取り敢えず騎士を向かわせている。これ以上良からぬ噂が立つのは忍びないので周囲に悟らせないようにと部下には言い含めている」
でもリーズナがその過程で暴れたら最悪、殺さなければならないかもしれない。そして実行するのはオルガの心臓を持っている私の役目になるだろう。
オルガの心臓の持ち主は生物兵器なのだ。
強大な神の力をその身に宿し、戦争が始まれば国の為に戦場に出ることだってある。


ドゴーンッ

「きゃっ」
「スカーレット」
地面が揺れた。
倒れそうになる私をノエルが支えてくれたため、怪我はせずにすんだ。
エドウィン殿下は壁についていた。
「何」
「スカーレット、あれ」
ノエルが示した方向には学園があった。そこから灰色の煙が上がっている。今の地響きは学園のどこかが爆発したことによる地響きだったのだろう。
「王城と学園はかなりの距離があるのに」
それでもあそこまで揺れるということはかなり大きな爆発だったのだろう。
学園にはアリーヤやレイクロードがいる。
「ノエル、学園に行ってみましょう。アリーヤたちが心配だわ」
「俺も行こう。嫌な予感がする」
私、ノエル、エドウィン殿下は急ぎ学園に向かった。
学園は半壊。
現場は混乱していた。
学園から逃げ出した生徒が外に溢れかえっていたが、みんな酷い怪我だ。
「何があった」
エドウィン殿下は比較的、怪我の軽い女子生徒を捕まえて話を聞く。
彼女の話によるとリーズナの周囲に黒い靄が立ちこみ、クラスメイトの一人がそれに気づき、リーズナに注目が集まった時に地面が揺れ、気が付いたら爆発が起こっていたそうだ。
彼女はその様子を教室の外から離れていた場所で見ていた為無事だった。けれど、教室にいたクラスメイトは恐らく無事ではすまなかっただろうと彼女は言う。
アリーヤはその時、どこにいたのだろう。
彼女とリーズナは学年が違うし、大丈夫だとは思うけどでも、外に逃げてくる生徒たちはみんな怪我をしている。
「スカーレット、学園の中に入ってみよう」
ノエルの提案に私は真っ先に頷いた。
< 58 / 59 >

この作品をシェア

pagetop