イノセント ~意地悪御曹司と意固地な彼女の恋の行方~
世の中は意外性の塊

新しい生活

「おはよう」
「ああ、おはよう」

午前7時。
寝室から起きてきた遥は、Tシャツに短パン姿。
キッチンに立つ萌夏もジャージの上下。
どこか部活の合宿のような色気のない姿であいさつを交わす2人。

萌夏が遥のマンションにやってきて一週間。
他人と暮らす生活にもだいぶ慣れた。
初めのうちこそ遠慮があったが、今では何も話さない沈黙の時間さえ気にならなくなった。


「お、今日の味噌汁は玉子が入っているんだな」
嬉しそうにお鍋を覗き込む遥。

「かき混ぜずに、ちゃんとポトンと落としたからね」

「サンキュー」

お坊ちゃんのくせにお味噌汁に落とした玉子が好きなんて、なんだかかわいい。
それもこだわりがあって、崩すのではなくポーチドエッグのようにそっと入れ、中に少し半熟部分が残るくらいの火の通りが好き。
他にも、梅干しはシソ梅派で甘いのはダメ。目玉焼きにはシンプルに塩コショウ。海苔は味付けのり。と好みはわりとうるさい。

「玉子焼きはないの?」
塩鮭ときんぴら、ほうれん草のソテーとソーセージが乗ったお皿を見て遥は不満そう。

「お味噌汁に入っているんだからいいでしょ」

玉子だってとりすぎはよくないし、栄養学を勉強している萌夏としてはバランスのいい食事を心がけたい。

「わかったから、明日は玉子焼き」
「はいはい」

文句を言いつつも二人でテーブルにつき、

「いただきます」
いつもの朝が始まる。
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