私があなたを殺してあげる
私が、殺してあげる

 智明が初めて弱音を吐いてくれた、初めて家に泊まり、初めて結ばれた。

 今日は初めてのことばかりだ。


「なんか熱い・・・ 熱があるんかな? まさか、智明の風邪が移った? ええっ、マジで?」

 私は一人で盛り上がり、顔を真っ赤にする。

「これは恋熱・・・?」

 自分で言って恥ずかしくなる。私は両手で顔を塞いだ。

 幸せだった、智明と結ばれて。

 ずっとこんな日が続けばいいのにって、本気でそう思った。



「さぁ、夜はどうしようか・・・ とりあえずビール買いに行こうかな」

 智明がいれば夕食も作るつもりだったが、智明は急ぎ帰ってしまった。だったら何か簡単なもので済まそう。

 私はドラッグストアに、ビールと何か冷凍食品でも見に行こうと鍵とスマホを持った。


「智明・・・」

 握ったスマホをじっと見つめる。


 浅尾さんから電話って、なんやったんやろう・・・ またお金の話?


 あゆむさんから聞いた話ではかなりの金額を数人から借りているとのことだった。それをちゃんと返済しているのかは不明だと。ただ、それを返済するために智明は、朝晩、寝る間も惜しんで働いているんだと。

 浅尾さんは智明みたいに本業以外にも働いているんだろうか? 週二回は店に来て、その後、加寿実さんと二人で会っている。顔色もいいし、睡眠不足って感じでもない。とても深夜働いているようには見えない。


 一体、浅尾さんは何を考えて生きてるんだろうか? 息子が働き過ぎで体調を壊していても何も思わないんだろうか?


 私は浅尾さんに不信感しかなかった。


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