天才脳外科医は新妻に激しい独占欲を放ちたい
再出発は彼の隣で
　空は晴れ渡っているのに空気が凍りそうなほど冷たい二月中旬の日曜日。
　陽貴さんの大学時代の友人が家を訪ねてくることになった。

　今は別の総合病院で一般外科のドクターをしているらしい。


「休みなのにごめんな」
「ううん。楽しみだよ、私」


　ソワソワして待っていると、約束の十四時少し前にチャイムが鳴った。


「久しぶり。急に悪いな」
「元気だったか？　ちょっと痩せた？」


　姿を現したのは、陽貴さんより少し背が低い細身の男性。
　短髪で凛々しい顔つきの彼は、私にぺこりと頭を下げた。


「初めまして、木藤(きどう)です。倉田がいつもお世話になります」
「いえっ、お世話なんて」


　お世話をしてもらっているのは私のほうだ。

　木藤先生は人懐こい笑顔で私をリラックスさせてくれた上に、『エール・ダンジュ』という有名な洋菓子店のケーキをくれた。
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