2番目の恋
笹崎の顔を見上げる。

「もうこれ以上、咲良が大きくなったらダメだなーと思って。」

笑ってそう言う。

私が守りたいものって何なんだろう。

笹崎と咲良と3人の生活以上に、守りたいものって何なんだろう。

今までの日々を手放してまで、私が本当に手に入れたいものってなんなの?

突然フワリと笹崎の腕から解かれる。

「もうこうやって会うのやめよ。」

こんな時に笑顔で言うなんて。

嫌だ。
笹崎とずっと一緒にいたい。

心では強くそう思うのに、口から出てこない。

もう笹崎が手のひらから零れ落ちそうな位置にいるのに。

私は何も言えず、でも小さく頷いた。

笹崎がいなくても平気だ。
私は咲良と幸せになるんだから。

たぶん、私、すごく泣きそうな顔になってる。

なのに笹崎は歯を見せて笑う。

突然、咲良が部屋の奥から泣いた。

やっと私は小さく笹崎に「分かった。」と言った。

最後に笹崎は「元気にやれよ。」と言って私の頭をポンポンとする。

行かないで。

アパートの外階段を降りて行く笹崎の背中を見つめながらそう思った時、また咲良が泣いた。

私は笹崎の背中を気にしながら、ドアを閉めて急いで咲良を抱き抱える。

笹崎、行かないで。

なんで私は追いかけないんだろう。

ずっと後悔するかもしれない。

でも足が全く動かなかった。
< 31 / 40 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop