雲居の神子たち
本当の黒幕
暗闇の中、何かに乗せられて運ばれている。
ギリギリと揺れるたびに、頭や肩に痛みがある。
でも不思議だな、今は暗闇の中にいて何も見えない。

ゴトン。
体が床にぶつかる音。

痛っ。
声が出そうになるのを必死にこらえた。

「おい、そっと扱え」
男の𠮟る声。

どうやらまだ殺す気はないらしい。
そんなことを考えていると、急にあたりが明るくなった。

ウッ。
目を閉じたまま意識を集中する。

しばらくすると、男と横たわる私の姿が見えてきた。
先ほどまでの和室と違い、四方をすべて壁に囲まれた部屋。
中央に大きなベットがあり、男の手によって私はそこに寝かせられた。

意識のない私をいやらしい目で見る男。
大きくてごつごつした掌が頬をなでるたびに、鳥肌が立つ感覚。
今は体を離れ意識だけの存在のはずなのに、不快な感情は伝わるものらしい。

トントン。
ドアをノックする音。

「なんだ」
不機嫌そうな男。

「準備が整いました」
「そうか」

触れていた男の手が私から離れていく。
どうやら何か企んでいるらしい。
< 78 / 115 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop