シークレットベイビー 弥勒と菜摘
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男性が平謝りで、加納菜摘(かのう なつみ)に言った。


「ほんっとにオレが悪かった! 」


狭いワンルームアパートの菜摘の部屋。
男性の隣で、同じように頭を床に擦り付けるようにしていた女性が、


「お願いしますっ! 」


と菜摘の手まで握ってすがってきた。


人生で、こんなにも何かを頼まれることはないんだろうな⋯⋯ 。
と、菜摘は妙に冷静に思った。
ここまでされたら、引き受けちゃうんだろうか私⋯⋯ 、
な訳!

まさか!

出来ることと出来ないことがあるでしょ!
ぜったい無理だよ!



男性が、


「妻と子供にだけは、バレたくないんだ! 」


と涙目で言う。
チラッと菜摘を見て、
[赤ん坊には罪がなくてかわいいなぁ]
と小声で付け足し、また、元のように頭を下げた。

女性が、


「私、ダーリンとやっと真実の愛を見つけて、海外に永住するんですっ、ダーリンに言えないよ、ぜっっったいに! 」


と涙目で言う。
[菜摘さんとも血がつながってる子、ですしね、]
とこちらも一言付け足してから、また頭を床にすりつけた。


「「だから、お願いします! 」」

「「一生のお願い!!! 」」



✴︎



男性は6才年上の菜摘の兄。
結婚していて子供が2人いる。
妻とも仲がいい。

女性の方は、菜摘は今日、この状況で初めて会った、兄が一緒に連れてきた人。
外人の婚約者のいるというかなりの美人さん。美人なのにすごく無邪気に可愛らしい。



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