隣の部屋の新人くん
引っ越し挨拶
ピンポーン。
インターホンが鳴る。

土曜日の夕方。

ああ、今日もダラダラしてしまった、と自分の手抜きな恰好とほぼすっぴんに近いメイクを後悔する。

「はあい」とインターホンに出た。

「あの、隣の部屋に引っ越してきた者ですけど、引っ越しの挨拶に伺いましたあ」

なんとなくまだ若い男の声。
大学入学か、就職で引っ越してきたんだろう。

私は適当なパンプスを突っかけて、ドアを開ける。
と、思いがけず爽やかなお兄ちゃんが立っていた。

「隣の部屋に引っ越してきた坂口と言います。あのこれ・・・」

彼は爽やかな笑顔で紙袋を差し出す。

「ティッシュとあと、すみません、大学は京都だったんですけど、あの、ちょっと買うの忘れちゃって」

そう笑いながら紙袋からお菓子を覗かせた。
そこには「東京銘菓」の文字。

「東京駅で買っちゃいました」

あはっと誤魔化したような笑いが飛び出す。
私もつられて笑う。
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