偽りの夫婦
異常
「ん……あれ…?紫龍?」
陽愛が目を覚ました。
身体に力が入らず、ゆっくり起き上がる。
サイドテーブルの上に手紙があり、見てみると。

【陽愛へ
仕事に行ってくるね。
陽愛が可愛すぎて、止まらなかった。ごめんね。
なにかあったら、すぐ連絡必須だからね!
愛してるよ。
紫龍】

紫龍の書いた癖のある字を、なぞる。
ふと、自分の身体を見ると、身体中キスマークだらけだった。
こんなに愛されている証があるのに、どうしてこんなに不安になるんだろう。
陽愛は手紙をただ、握りしめていた。

「もうそろそろ起きよ…。
あ…そうだ、服……」
シーツを身体に巻き付け、寝室を出た。
「あ、起きられましたか?」
ちょうど、三好に会う。
「あ、すみません。こんな格好……」
「服やバック、届いてますよ?」
「え?あ、はい」
なんでわかるんだろう。
ほんと凄い人だ。こちらの言わんとしてることがすぐにわかる。

「シャワー浴びてきます」
「では、着替えを置いておきますね」
「はい、ありがとうございます」
風呂場に行こうとして、足が止まる。

「あの!三好さん!」
「はい」
「今回、すみませんでした!」
「何がでしょう?」
「紫龍に怒られましたよね?私の嫉妬なんかしたせいで、巻き込んですみませんでした!」
陽愛は頭を下げた。

「いえ。大丈夫ですよ」
「………」
「奥様?」
「……どうして?」
「え?」
「どうしてそんなに穏やかでいられるんですか?
私のこと、責めてもおかしくないのに。
それに、三好さん…紫龍のこと━━━━━━」
「愛してますよ」
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