若女将の見初められ婚
結婚の決意は唐突に

食事会の当日、私は桜色の着物を身につけた。桜色は華やかさと愛らしさをアピールできる色だ。色気の無さをなんとか着物でカバーしたい。

髪飾りはバチ型のものにする。
バチ型とは、三味線を弾くバチのような形をしたかんざしのことだ。

父は玉かんざしが得意なのだが、目立つ方がよいと考え、ここは大きめの物にした。

着物を着ると、背筋がスッと伸びて気持ちが整う。髪を丁寧に結い上げ、髪飾りを刺した。

鏡に映る顔は少し不安そうに見える。口角をニッと上げて笑顔を作った。大丈夫、まずは会うだけやから。

頬をパシッと叩いて、気合いを入れた。

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