ここは会社なので求愛禁止です! 素直になれないアラサー女子は年下男子にトロトロに溺愛されてます。
「諦めないからね?」

「っつ!! もう帰る!!!」

 グイッと松田の腕から抜け出し、鞄を急いで手に取り会社を出ようと足早に歩く。
 私のカツカツとヒールの音とコツコツともう一つの靴の音。

「なんで隣歩いてんのよ」

「だってこんな夜に女性一人とか危ないでしょ?」

「いつも一人で帰ってるから」

「これからは俺が送りますよ」

「結構です」

 私の歩幅に合わせて横にピッタリついてくる松田。
しかもさりげなく車道側を歩いてくれている。
恋愛経験少ない私でも分かる。
 松田は優しい。
 それは女を落とす為なのか、素なのかは分からないが。
 結局同じ電車に乗ってしまった。
満員とまではいかないが席は空いていなかったので自分の降りる駅の方のドアのそばで立つ。
松田もいるが特に話すこともないので最寄駅に着くまでの間お互い無言で電車に揺られていた。
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