家出少女は不器用王子と恋をする。
家出少女と不器用王子
散々泣いた私は、子供のように泣き疲れてそのままお風呂にも入らず眠ってしまった。

明け方に目を覚ました私は仁坂が寝静まっていることを確認して、静かにシャワーを浴びた。
鏡に映る自分の目はすっかり腫れていた。

みすぼらしい。

まだ朝の支度を始めるには時間が早かったのでもう1度寝ることにした。

これが全て夢だと淡い期待をしながら。

そんな期待通りになるわけがなく、結局浅い眠りしか出来なかったけど。

7時15分になってリビングに行くと、いつも朝食のいい匂いがして来なかった。

それどころかとても静かで冷たく感じる。

キッチンに仁坂の姿はなく、机の上に冷めた朝食とお弁当と広告の裏に書いたメモとカードキーが置いていった。

『朝食は電子レンジで温めてから食べてください。
俺は先に電車で行くけど、偲はカードキーを置いておくのでこれを持って車で登校してね。
お弁当、忘れないように』

そのメモの字は万年筆で書かれており、その色は月夜だった。

使ってくれたんだ・・・。
仁坂・・・・・・。

私はそのメモをギュッと握り、その場にしゃがみ込んだ。

< 117 / 189 >

この作品をシェア

pagetop