政略夫婦の懐妊一夜~身ごもったら御曹司に愛し尽くされました~
3.埋まらない溝






妊娠三か月になった。食べづわりは治まることはなく、空腹時は相変わらず気分の悪さに襲われる。

今日は夏樹は朝食を食べずにギリギリまで自室で仕事をしているようで、私はひとりで茹でた野菜だけの朝食を流し込んだ。

細かく浅い呼吸をし、不快感をやり過ごしながら食器を片付ける。すると夏樹が、やっとスーツに着替えてリビングへやって来た。

「桃香。おはよう」

「おはよう」

彼はパソコンをいじっていたのか、凝りをほぐすように肩を回している。ワイシャツにスラックスで、右手にネクタイを持っている。

「なあ。ネクタイ頼む」

対面キッチンの私に向けて、夏樹は距離があるまま、クリーム色のチェックのネクタイを見えるように差し出した。
二年前の誕生日に私が贈ったネクタイだ。
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