7歳の侯爵夫人
「貴女は記憶を取り戻しても、こうして俺を慕ってくれるのかな。俺を、夫と思ってくれるのかな」
思わずこぼしてしまった呟きに、コンスタンスはキョトンと首を傾げた。

「どういうこと?オレールは私の旦那様でしょう?」
「そうだよ、そうだ。そうなんだけど…。今こうしていることを、忘れてしまったりしないかな?俺を好きだと言ってくれたことも、一緒にいたいと言ってくれたことも、忘れてしまわないかな」

オレリアンの目は、とても悲しげに見えた。
夫は時々こんな目で私を見る…。
コンスタンスはそう思ったら、急に悲しくなって、夫にギュッと抱きついた。

「嫌よ、嫌。だったら私、記憶なんて戻らなくていい。大人になんてならなくていい。ずっとこのままでいいわ!」

コンスタンスに叫ばれ、オレリアンはハッとした。
自分の不安を吐き出して、妻を不安にさせてどうするのだ。

「コニー、ごめ…」
「私は忘れないもの!だってオレールが大好きだもの!」

コンスタンスの涙で、オレリアンの肩が濡れていく。

「ごめんコニー。情けないこと言って、ごめん」
オレリアンは妻の顔を上げさせると、自分の指でそっと涙を拭ってやった。

「俺も好きだよ、コニー。貴女だけが、ずっと大好きだ」
「オレール…」

オレリアンの蒼い目が自分を優しく見つめている。
彼に見つめられると、体が熱くなって、胸がギュウッと痛くなる。

リアに言わせると、コンスタンスはまだ子供だから、彼女のオレリアンに対する『好き』は保護者に対する好意で、そんなの『恋』じゃないと言う。
でも、『恋』じゃなきゃ、この胸の痛みはなんなの?

彼に見つめられると体が熱くなるのはなんでなの?
彼が他の女の子と話してるとイライラするのは何故なの?
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