7歳の侯爵夫人
前回の記憶喪失…、つまり7歳の少女の時はまだ良かった。
王太子と婚約したばかりでまだそれほどの思い入れもなかったため、わりとすぐ事実を受け入れたから。

だが15歳のコンスタンスでは、事実をどう受け止められるかわからない。
その頃と言えば、お妃教育も終了に差しかかり、本格的に王太子と共に公式の場に顔を出し始めた頃だ。

幼馴染だった2人が長い時間をかけて愛情を育んでいたのを、側で見ていた家族は知っている。
だから、事実を知っての彼女の嘆きを思ったら、口が重くなるのは当然だ。

父は『時期を見て伝える』と言った。
だが、15歳のコンスタンスにいつまでも隠しおおせるわけもない。

「リアはどう思う?」
エリアスはいつも妹の側にいる侍女リアにたずねた。
リアは「恐れながら…」と言いながら重い口を開いた。

「お嬢様は、17歳の時に一度婚約解消を言い渡されています。あの時は冷静に自国のこと、王家のこと、そしてフィリップ殿下のお立場を思い、何一つ反論することなく受け入れていらっしゃいました。でも今のお嬢様は15歳とのこと。その頃のお嬢様はフィリップ殿下の婚約者としてデビューされた頃です。側から見ておりましても、殿下とお嬢様の仲は良好で、相思相愛のご様子でした。今のお嬢様に婚約解消と、すでに人妻であることを告げて、どれほど取り乱されるのか想像もつきません」

リアは淡々と言い切ったが、オレリアンの顔を見れなかった。
オレリアンは青ざめ、唇を噛んで立ち尽くしている。
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