7歳の侯爵夫人
「…あら?これは見覚えのないブローチね」
コンスタンスが引き出しの中からブローチを1つ手に取った。

「これは…、何の石かしら。宝石ではないようだけど。まさか、殿下にいただいたものではないわよね?」
片付け忘れたということもあるかもしれないが、そもそも王太子に贈られるものは全て王家御用達の宝飾店で作らせたものである。
どう見ても安物のブローチが、王太子に贈られたものとは思えない。
それによく見れば他にも見慣れないブレスレットやネックレスがあり、どれも可愛らしくはあるが高価なものではないようだ。

「あ、それは…」
ブローチを見たリアが声をあげた。
だが、気まずそうにすぐに口を噤んだ。

「なあに?教えて、リア」
「それは、その…、コニーお嬢様がお倒れになった日…、王太子殿下の成婚パレードの日に付けていらしたもので…」
「…私が?」
「それは旦那様…、いえ、ヒース侯爵様がコニーお嬢様にお贈りになったものなのです」
「侯爵様が?誕生日などにかしら?」
「いいえ、ヒース領でお2人は毎日のようにお出けになっておりまして、お出かけするたびに侯爵様はお嬢様に何かプレゼントされていました」
「…そうなの…」

コンスタンスは少し驚いたようだった。
2人で出かけていたことに対してだろうか。
それとも侯爵が妻に安物ばかり贈っていたことに対してだろうか。

リアはオレリアンが気の毒になった。
だから、少し付け加えてしまった。

「お嬢様…、お嬢様はとても侯爵様を慕っておいででした。侯爵様の青い目が大好きだと…、だから特に、青い物をいただくととても喜ばれておりました」
「私が、侯爵様を慕っていた?」

俄かには信じられなかった。
コンスタンスが慕っていたのは、ずっとフィリップただ1人だったはずである。
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