7歳の侯爵夫人
最近のコンスタンスの変化を見てとった兄エリアスは、ある日、久しぶりに外に出ないかと声をかけてきた。
たまには街に、買い物にでも行こうと。

コンスタンスは快諾した。
いつまでも引きこもっているわけにはいかない。
それに今は、両親や兄、使用人の気遣いが素直に嬉しいと思えた。

「お嬢様、こちらのドレスはいかがですか?」
主人の久しぶりの外出に喜んでいるのはリアだ。
あれだこれだと外出用のドレスを引っ張り出している。

「そうね。あら、こんなドレスあったかしら。あら、これも。ああ、そうか、16歳以降に作ったのね」
コンスタンスが手にとったのは、オレリアンとの結婚が決まってから公爵家が作ったドレスだ。

「そうね、これにするわ」
コンスタンスが選んだのは、青いドレスだった。

「お飾りはどうされますか?」
「街に出かけるだけだから、最小限でいいわ」
コンスタンスは久しぶりに宝飾品の入った引き出しを開けた。
そして、ため息をついた。

コンスタンスは今までこの引き出しを開けるのを躊躇っていた。
想像していたことではあるが、今まで王太子に贈られたきたものが全く無かったからだ。

王太子に贈られたプレゼントは、婚約が解消された時にコンスタンス自身が処分していたようだ。
宝石など高価なものは送り返し、それ以外のものは目につかない場所にしまいこんでいたという。

もちろん今のコンスタンスにそんな記憶は無いが、自分ならそうするであろうと想像はしていた。
だから今ここにあるものは、両親や祖父母に贈られたものばかりのはずである。

(16歳の誕生日…、殿下は何をくださったのかしら)
何をもらったとしても、当然ここにはもう無いであろうが、それを思うとコンスタンスは切なくなった。
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