7歳の侯爵夫人

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絶句するコンスタンスを見つめ、王妃は優雅にカップに口を付けた。
そしてコトリとカップを置くと、ニッコリ微笑む。

「私ね、知っていたの。ヒース侯爵に恋人がいることも、彼が貴女に全く興味がないことも。だからわざと、貴女との縁談を持ち込んだのよ。だって貴女は我が国最高の淑女として成長したのだもの、いくらフィリップとの婚約が解消されたからといって、全く貴女の傷にはならないわ。貴族たちはこぞって貴女に求婚するでしょうし、きっと誰に嫁いでも貴女は大切に扱われ、幸せになれたでしょう」
微笑みを絶やさないまま語る王妃を、コンスタンスもまた黙って凝視する。

「貴女がね、夫に顧みられず不幸な結婚生活を送っていたならまだ良かったの。なのに貴女ったら、いつのまにかヒース侯爵と仲睦まじくやってるって言うんだもの。許せるわけないじゃない。やっぱりあの女…、貴女の母親と同じ、男を誑し込むのが上手なのだと思ったわ」
今度は蔑むように見据える王妃に、コンスタンスは目を見張った。
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