7歳の侯爵夫人
やはり王妃は、母を妬んでいたのだ。

王妃は我が国最高の女性として国民に崇められてはいるし、正妃として国王にも丁重に扱われている。
フィリップが即位すれば国母としてさらに大切にされることだろう。
しかし国王は王妃に義務とばかりにフィリップを産ませた後、次々と側妃や寵姫を迎え、フィリップの異母弟妹たちを産ませている。

一方ルーデル公爵は夫人を唯一の妻として慈しみ、社交界でも有名な愛妻家だ。
もちろん子供も夫人が産んだエリアスとコンスタンスしかおらず、『男子が1人では不安であろう』と側室を世話しようとした国王の話も即座に断っている。
身分はともかく、1人の女性としてどちらの方が幸せであるかは、火を見るより明らかだ。

そういう意味で王妃は気の毒ではあるが、しかし、母を貶められて黙っているわけにはいかない。
「母は…、そんな女性ではありません。父は本当に心から母だけを愛して…」
「そんな話、聞きたくないわ」
王妃はバサリと扇子で顔をあおいだ。

「フィリップの妾になりなさい、コンスタンス。そして、フィリップを支えて。貴女が受け入れてくれさえすれば、全て丸くおさまるわ」
そう言ってコンスタンスをジッと見つめてくる王妃の目を見て、コンスタンスは『私はこの目を知っている』と思った。

あの日も王妃はコンスタンスに言ったのだ。
『貴女さえこの縁談を受け入れれば全て丸くおさまるのよ』と。
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