7歳の侯爵夫人
結婚式を挙げたその日に、オレリアン様は私を連れてヒース侯爵領に向かいました。
彼は行く途中の馬車の中で、私にこうおっしゃいました。

「私たちはお互い王命で夫婦になったのです。私は貴女のお立場も、辛いお気持ちも、理解しているつもりです。だから貴女には、心穏やかに、静養していただきたいと思っています。この上は、なるべく関わらずにいるのがお互いのためにも良いと思うのです」

最後の言葉はよく理解できませんでしたが、彼が私のために侯爵領に向かっているのはわかりました。
王太子殿下に婚約解消された私は社交界で噂の女になっておりましたし、何より、殿下が新しい婚約者を伴って顔を出される社交界に、私は近づきたくありませんでした。
この先、殿下が婚約されるのも、成婚されるのも、目にしたくはありませんでした。
いえ、祝福したい気持ちはあるのです。
でもただ、お二人のお幸せを遠くからお祈りしたかったのです。
だから、王都から離れたい私の意を、オレリアン様が汲んでくださったのだと思います。

オレリアン様は決して冷たい方ではありません。
使用人への接し方などを見ても、とても優しい方だとわかりますから。
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