もふもふな聖獣に反対されても、王子は諦めてくれません

「一堂に、と言ってもほかの婚約者候補はどのご令嬢もご用事があるそうで、実質エリック様とおふたりでございますが」

 イーサンは、王子と私がふたりで食事するのをよく思っていないのではなくて⁉︎

 そもそも『婚約者候補』になった記憶は、全くありませんけれど⁉

 追い出した側だと思っていたイーサンだったが、さきほどからマリーを追い出したい人間とは思えない発言ばかりする。

 ともすれば、城に留まらせたいのかと思えるほどに。

 エリックと婚約者候補との晩餐については想像とかけ離れているし、予想していなかった話の流れに目を白黒させる。

 マリーの想像では見合い写真が山になっていて、晩餐では誰がエリックの近くに座るのか静かな争奪戦が起き、ダンスなんてあった日には踊りたい淑女たちが長蛇の列を成すとばかり思っていた。

 実際、冷血と噂されていても、未婚の第三王子への女性の陶酔(とうすい)ぶりはマリーの耳にも入るほどだ。

「ど、どうしてそんなに人気ないんですかっ!」

 確かにちょっと難ありだけど麗しの王子であるし、近寄り難いから目の保養専門ってこと⁉︎

 ため息を吐くイーサンは、この問題にかなり手を焼いている様子。
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