もふもふな聖獣に反対されても、王子は諦めてくれません
扉を開けるとほかの世話係がいて、「ああ、きみが野戦病院のマリア?」とお決まりの質問をされる。
「いえ、マリー……」
自己紹介をする前に、もふもふに突進されて言葉は続けられない。
「ハハッ。すごく好かれているみたいだ。さすがだね」
軽やかに笑う先輩世話係の男性は、疲れているのか青白い顔をしている。
ふわふわに囲まれて夢見心地であるものの、さすがに彼が心配になる。
「大丈夫ですか? 顔色が優れないみたいですが」
「ああ。うん」
どことなく返答も力無い。
すると奥から、はつらつとした女性が現れた。
「シャリオ。今日は休んで。新しい人が来たんだもの。私たちでなんとかするわ」
女性はシャリオを帰らせてからマリーと向き合う。
「私はケイトよ」
「マリーです」
もこもこに押しつぶされながら、なんとか応える。
「大丈夫? 初日から魔力を枯渇させないでね」
「枯渇?」
首を捻るマリーにケイトは目を見張る。
「もしかして、枯渇した経験はないの?」
話をしようとすると、邪魔をするみたいに顔を舐められる。
「ふふっ。くすぐったい。あ、あの。このままではお話できなくて」
「それはそうね。あなたたち! ご飯を食べてらっしゃい」
ケイトに誘導され、聖獣たちは再び奥の方へ歩いていく。