販売員だって恋します
22.エピローグ
「美味しそう……」

『くすだ』の調理場では料理人達が忙しそうに、動いている。

その調理場で騒ぐこともなく、食材が調理されていくのをキラキラした目で見ている子供がいた。

「要さん、お口を開けて」
要さんと呼ばれた男の子は、嬉しそうに口を開けた。

料理人はくすりと笑い、その可愛い口の中に小さく切った角煮を入れる。
「どうですか?」

「まだ、味が強いかんじがするけど……おいしい……」
「ああ、そうですね、まだ染みきってはいないですからね。だんだん味が染みてくるとまた違った感じになりますよ」

「染みてるのが好き」
「そうですね」

料理人は要の頭を撫でて、水を渡す。
子供はこくん、と素直に水を飲んだ。

「お誕生日には何をお願いしたんですか?」
「包丁!」

「え?!」
「だって、みんな自分の包丁でお料理するんでしょ。僕も欲しいんだもん。おとうさんにお願いしたの」
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