年上王子の不器用な恋心
確かめあう気持ち

「……さん、一ノ瀬さん!」

「えっ?」

「えっ、じゃないですよ。何度も呼んだのにずっと上の空でしたけど、今日は体調が悪いんですか?」

何度も名前を呼ばれていたらしく、石橋くんが心配そうに聞いてくる。

「ごめん、大丈夫。それで何か用?」

「颯さんが一ノ瀬さんと先に昼休憩に行ってと言われたので声をかけたんです」

「そっか、ありがとう」

それで、わざわざバックヤードまで呼びに来てくれたのか。
昼休憩の時間になっていたことに全然気がついていなかった。

「奥の個室に行きましょう」

石橋くんに促され、私は使っていたパソコンを閉じて奥の個室に向かった。

「今日はオムライスです」

石橋くんが厨房に取りに行ってくれたお皿をテーブルの上に置く。

「いただきます」

手を合わせ、スプーンでオムライスをすくって口にいれた。
卵はふわとろだし、バター風味のチキンライスもすごく美味しい。
辛くて悲しいことがあってもお腹って空くんだな、と自嘲気味な笑みがこぼれた。

「あの、元気ないみたいですけど何かあったんですか?」

「えっ?」

「一ノ瀬さん、いつもはあれこれ話題を振ってくるのに、今日は全くしゃべらないから何かあったのかと思って……」

石橋くんにそんなことを言われるとは思わなかった。
私が「何でもないよ」と言おうとしたら、先に釘を刺された。

「そんな目を腫らして何でもないとか言わないでくださいよ」
< 103 / 134 >

この作品をシェア

pagetop