悪魔が気に入るお飾り人形!
優しい悪魔の寂しがり人形
……

『お父さん、ごめんなさい…』

『その覇気のない顔が嫌なんだよ!それに何だ!?俺の飯は冷めたやつか!?死んだあいつと同じだ!お前は親を馬鹿にしてんだろ!!』

『…夜中なのに帰って来なくて…明日も学校だから…』

『口答えするな!』

バシッ!

『……痛いの…嫌です…』

『ちっとも痛そうにしてないだろ!反省はどうした!?』

バシッ、バシッ!

『……。』

『もういい!酒が足りない!!』

『……』

……


(嫌…痛いのは嫌……。いつも夜に家で一人なのも……)

「……っく…ひっく……」

「どうしたどうした…?いまさら痛かったのか…?」

気付くと、さっき抱きしめてくれたまま眠っていた彼が私を見て、少し心配そうにしながら苦笑している。
私はいつの間にか、寝ながら泣いていたようだった。

…いつからこんなに、涙腺が弱くなったんだろう…

「…痛いの…嫌…一人で夜に…お腹空いたまま待つのも…嫌……」

「さっきは痛くなかったろ??」

彼の言葉に、私は素直に頷いた。

「あ〜…そうかそうか、寂しがりなんだな。よしよし、夜はそばにずっといてやるからな〜?」

また頭を撫でられた。

「そんで、お前はしばらく飯係!買い出しは俺!お前の作った人間の食事も、悪くなかったからな〜。ただし、昼間はちっとだけ出かけるからな!」

「え……」

「実家帰りと『お仕事』。俺もいろいろ大変なんだぞ?」

「…はい…。」

「その代わり、お前の必要なもん持ってきてやるよ!」

彼はスッと立って支度を始めた。着替えの準備を見ていたけど、自分の服もけっこう持っているみたい。黒が多いけど。

「お前はもうちっと寝てろ。腹減ったら食ってろよ?何かしらあるからな。昼なら平気だろ?」

私が頷くと彼は満足そうに笑って、

「これ、今日の服な!」

そう言い残して扉の外へ姿を消した。
私はだるさで動けず、またウトウトと眠りに落ちてしまった。


しばらくして目が覚めると、窓の外はかなり日が高くなっていた。

(あの人、温かかったな…痛いの嫌だけど、すごく恥ずかしいけど、悪い人じゃないみたいだし…)

しばらくぼんやりしていたけれど、彼はまだ帰ってくるわけでもなさそうなので、服を着て外を見てみることにした。

(…フリフリの、レースだらけのメイド服……)

着る服もないのでそれを着て、私はなんのためらいもなく、玄関のドアを開けた。

「……。」

外は雲の海が広がっていた。空気が薄いのか、心なしか息苦しい…。 確か来たときは、周りは木ばかりの、山奥の小さな家だったはず…

(私を、逃さないように…?)

ちょっと外を見るだけのつもりだったのに、とんでもない事実を知ってしまった。

(…なんか…苦しい…?あ…動けない……)

外を見て呆然としているうちに時間が経ってしまったらしかった。

体力にも自信は無いし、日頃から運動をしないし苦手な私。
家から一歩も出ていない玄関で、息苦しさで身体に力が入らず倒れた。

(助けて…お母さん……悪魔さん……)
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