お前さえいなければ
婚約破棄
お茶会から数日、アヤメは相変わらずミヤコと比べられ、モヤモヤする日々だったがエンジのことを想って何とか日々を過ごしていた。

「ただいま帰りました」

アヤメが女学校から帰ると、使用人が「おかえりなさいませ」といつも通り機械的に言い、機械的にかばんを受け取る。

いつもなら、このままアヤメは自室に行く。しかし、自室に向かおうとすると使用人の一人に呼び止められた。

「アヤメ様、奥様と旦那様が応接室でお話があるそうです」

「私に?」

両親が自分を呼んでいるということに、アヤメは驚いてしまった。両親は地味で何もできないアヤメより、美人で何でもこなすミヤコを大切にしている。まるで、ミヤコしか娘がいないような扱いだ。

「ミヤコのことはよく応接室に呼んでいるけど、私のことを呼ぶのは初めてね……」

一体何の話をするつもりなのだろうか、と少し緊張を抱きながらアヤメは応接室へと向かう。そして、軽く深呼吸をしてからドアをノックした。
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