好きになってもいいですか? ~訳あり王子様は彼女の心を射止めたい~
誰だって弱音を吐きたいときはある

母として…礼

気が付けば外が明るくなっていた。
8年ぶりに一人で迎える朝。
一人でいることがこんなに寂しいものだなんて思わなかった。

ピコン。

ああ、まただ。
仲のいいママ友から入ってくるメッセージ。
昨日大地が学校に行っていないのは保護者にも知れ渡っていて、着信が止まらない。

「あーあぁ」
広めのダブルベットの上で、天井を見上げてため息をついた。

大地が一歳になり平石のお屋敷からここに引っ越してくるときに買ったダブルベット。
ほんの数年前までここで大地と一緒に眠っていた。
大地は私の宝物で、あの子のためなら何でもできる、あの子さえいてくれれば何もいらないそう思って育ててきた。
いつも私の目の届くところにいて、大地のことなら何でもわかると思っていた。

「何でこんなことになったんだろう」

一人親で、食べるためには働かなくてはいけない。だから大地と向き合う時間がなかった。そんな言い訳をするつもりはない。
たとえどれだけ裕福なお家にいても人はみな働いているべきだと思うし、家庭だけを生活のすべてにするべきではない。慈善事業やボランティア活動に時間を割く平石のおばさまを見てそう思っていた。
でも・・・

「私の子育て、間違っていたのかな」
悲しいことだけれど、今はそんな気がする。
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