悪役幼女だったはずが、最強パパに溺愛されています!
風に揺れる緑の木々、澄んだ青い空、嗅いだことのない植物の香り。

ナタリアは自然の恵みを小さな体いっぱい感じながら、土道を歩き続けた。

まだ短い茶色いくせ毛は風に揺れ、もちもちとした白い頬は興奮で赤みがさしている。

と、足先まですっぽりと覆っているタイプのロンパースの足がもつれた。

調子に乗りすぎてしまったらしい。

――ズサッ。

頭から思い切り地面に転んでしまったナタリアは、びっくりしたのと痛いのとでヘーゼル色の大きな瞳をうるうるさせる。

「ふえっ、ううっ……」

ぶるりと肩が震え、大声で泣きじゃくろうとしたそのとき、視線の先に何かがいるのに気づいた。

「あぶ?」

丘のように小高く盛り上がった場所に銀色の狼がいて、じっと彼方を見つめている。

たくましい四肢をしっかりと地面につけた、凛とした立ち姿。

月の光に似た金色の瞳は、赤ん坊のナタリアですら目を奪われるほどに美しい。

やや距離があるため、狼はナタリアには気づいていないようだ。

「……わんわん?」

ナタリアも泣くのを忘れ、目の前の美しい生き物に見とれた。

絵本の中の狼は、何度か目にしたことがある。

だが絵で見るよりもずっと大きく神秘的で、そして何よりあの毛がものすごく気持ちよさそう。

なんていうんだっけ、ああいうの。えーと……。

「もふ、もふ……?」

(モフモフ……!)
 
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