とろけるような、キスをして。

バカなの?




「木曜日?」


『そう。だから有休とってもらわないといけないと思うんだけど、大丈夫か?』


「うん。多分大丈夫だと思う。それなら木金で連休取るかな」



 定時であがった仕事終わり。夕食の材料を買いにスーパーに寄っているときに先生からかかってきた電話。


面接の日にちが来月に決まったらしく、それの知らせだった。


頭の中でカレンダーを思い浮かべて、来月は比較的忙しくないはずだと数回頷く。



『わかった。それなら土曜とか日曜までこっちにいるか?』


「うー……ん、それは難しいかな。ホテルに三泊もするとさすがにお金厳しい」



 一人暮らしの金銭事情は深刻だ。いくらビジネスホテルでも、何泊もするほどの金銭的余裕は無い。


確かに実家の片付けもしないといけないから、できれば長く滞在したいところだが。


 晴美姉ちゃんは"いつでもうちに泊まりな!"と言ってくれるけど、さすがに新婚さんの家に何日も泊まるのは気が引けるし。


貯金はそれなりにあれど、できれば手を付けたくないというのもある。


たった数日寝泊まりするためだけに実家に水道や電気を通すのもいろいろと面倒だ。


 今回も一泊が限界だなあ、と思いながら玉ねぎを手に取って下に書いてある値段と見比べる。
今日はお肉も安いし、カレーでも作ろうかな……。


前に買っておいたカレールーが家のどこかにあったような。どこだっけ?


頭を捻って思い出そうとしていると、






『じゃあ俺ん家泊まれば?』



と思ってもみなかった言葉が聞こえた。


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