冷徹御曹司の溺愛は突然に、烈火のようにほとばしる~愛なき契約夫婦の艶美な一夜~

2度目まして

厳かなオルガンの音色が聞こえてきた。

小さな声で「さぁ、いきましょうか」と父親役に声をかけられ腕に手をかけるよう言われた。

ちょっと…ほんのちょっと身震いする。
あぁ、もう後戻りできない。

教会の扉が開くと目の前にはステンドグラスからの光が煌めくように注いでおり、前を向くとタキシードを着た男性が立っている。

私たちは一歩ずつゆっくりと歩みを進める。

新郎に近づくにつれ、あれ?と思う。

こんなイケメンだった??

今日2回目だからよく覚えてなかったけど、こんなイケメンだった?

私たちは彼の目の前で立ち止まり頭を下げる。

彼が私に手を差し出してきた。
私は彼の手を取り、まじまじと見てしまった。

彼は一瞬驚いたようだが微笑み返してくれた。

彼は私の手を取り自分の腕に組ませる。

ドキン…

私たちは祭壇へ一歩近づいた。

嘘の誓いの言葉に心苦しい。
神様、許してください…。

私たちは嘘の誓いを立て、みんなからのライスシャワーを浴び教会を後にした。

披露宴では会社関係の挨拶が続く…。
みんな話したがりなのね…誰も聞いてないのに。

私の友達という人が私との高校の頃からのエピソードを話してくれる。
よくできた話で感心する。
プロに頼むとこんな素敵なエピソードが仕立てられるのねぇ…なんでもお金なのね。

私たちは各テーブルを回りお祝いを受ける。
彼の側は200人はくだらないだろう。
人数の差に圧倒される。
さすが弓川コーポレーションの御子息だわ。

これでもきっと厳選したのだろう。
選ばれただけでも光栄なのだろう。

やっと私の両親にあてた手紙の時間となる。
響さんがマイクを持ってくれ、片手は私の腰に手を回す。
私は泣くに泣けず、ハンカチを強引に当てながら手紙を読み始めた。
またまた素敵なエピソードが書かれており、もしうちの両親がこんなの聞いたら涙が止まらないんだろうなぁと思う。
そんなことばかり考えてるからちっとも泣けない。
至極冷静になってしまう私に役者は無理だわ。

あぁ、やっとお開き…
長かったわ。
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