下弦の月
最後の瞬間(とき)
蝦夷に渡り、土方さんは……総督となり。





箱館の五稜郭を占領し、





額兵隊という西洋軍隊と松前に進軍して、松前城を陥落させた。






その後、残兵を追って江差に向かったが。




援護に来た榎本さんの軍艦開陽丸が暴風雨で座礁してしまった。





唯一、新政府軍に勝っていた軍艦の一つを失う事になった。






その後、榎本さんが主催した祝賀会が行われるため、




土方さんは無事に五稜郭に帰って来た。







土方さんの部屋で出迎えた私を…強く抱き締め、






「ただいま。」





と、額に唇を落とした。







「おかえりなさい。」






「いいもんだな、誰かが帰りを待っててくれるのは。だがな…指揮官である俺が戦地に女を侍らせていいのか?って…思う時もあるんだが…俺は月香を離せねぇ。」







「…土方さん…離されても…私は離れません…」







「…本当に…お前は…いい女だな…前に言ったよな?いつか…落ち着いたら、俺の気持ちを話すと…」







「…はい…」






「もう…お前は気づいてるかもしれねぇが…聞いてくれるか?」







「はい、聞かせて下さい…私は土方さんに想われてるって確信を下さい…」







抱き締めたまま、土方さんは言葉を選ぶように……





自分の気持ちを伝え始めた。
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